大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和39年(う)1482号 判決

主文

原判決中詐欺罪(原判示第一の別表の罪)に関する部分を破棄する。

被告人を右別表(一)1の罪につき懲役二月に、右別表(一)1以外の別表の罪につき懲役六月に各処する。

被告人の控訴を棄却する。

理由

<前略>ところでまず職権をもつて調査すると、原判決は本件詐欺罪について刑法第四五条後段の適用を誤つているものと認められるので、以下これを説明する。

被告人は原判示の三個の確定裁判があるが、その裁判確定時について考えてみると、当審で提出された二通の交通事件即決裁判調書謄本及び一通の判決謄本によれば、原判示の三個の裁判のうち一、二は交通事件即決裁判であり、それぞれ昭和三六年一一月七日及び同月一〇日に言渡され、三の裁判は通常の公判手続による判決で昭和三八年三月一八日言渡されたことが認められ、これら三個の裁判が前科調書にそれぞれ昭和三六年一一月二二日、同月二五日、昭和三八年四月二日確定したものと記載されていることにかんがみれば、それぞれ一四日間の正式裁判請求期間又は控訴申立期間の満了により確定したものと認められるから、正確にいえば、原判示一の裁判は昭和三六年一一月二一日午後一二時の経過と共に、同二の裁判は同月二四日午後一二時の経過と共に、同三の裁判は昭和三八年四月一日午後一二時の経過と共にそれぞれ確定したものと認めざるを得ない(本件のような場合には、裁判確定の時期が不服申立期間の最終日の翌日の午前零時であるから、その午前零時から始まる日が裁判確定日となるのであり、前科調書にもそのように記載される。)。してみれば、原判決別表の罪は原判示一の裁判確定後に犯されたこととなるから、原判決がこれを原判示一の確定裁判の余罪と認めて法令を適用したのは誤りであるといわなければならない。

次に、原判示の確定裁判についてであるが、該当の交通事件即決裁判調書謄本によれば、右確定裁判を経た罪は昭和三六年一一月七日の犯行にかかるものであり、原判示一の裁判確定前に犯された同確定裁判を経た罪の余罪に外ならないことが明らかであるから、原判示二の確定裁判は本件詐欺罪が何個の併合罪となるかを決するについては何らの関係をもたないものであり、別表(一)1以外の詐欺罪は一個の併合罪として処断すべきであるにかかわらず、原判決が原判示二の確定裁判をも本件詐欺罪について併合罪の数をきめる規準として取扱い原判示のように処断したのは誤りであるといわなければならない。

以上説明の通りであるので、原判決は本件詐欺罪を処断するについて刑法第四五条後段の適用を誤つたものというべく、この誤は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、検察官の各控訴趣意について判断を加えるまでもなく、原判決中詐欺罪に関する部分はこの点において破棄を免れない。<以下省略>(裁判長判事足立進 判事栗本一夫 上野敏)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例